『備忘録』だとか、『日記』だとか。

日々のあれこれを記録する自己満足日記帳

『恋』とか、『雨』とか。

今日は母親の誕生日だった。

ちょうど家族揃って会食の予定だったので、そのときに渡す用のプレゼントを妹に見繕っておいてもらったのだが、なんともババくさい花柄のパジャマを選んできたので人選をミスったかもしれないと少し頭を抱えた。いやまあ、よろこんでもらえればなんでもいいのだが。

 

毎日毎日つらつらと自分のことばかり並べたてても面白くないので、今日は少し趣向を変えて私の好きな作品の紹介でもしようかと思う。そうはいってもおススメしたい作品だけで結構な数があるので、今日はとりあえず一つだけ。

なお、著作権的なあれこれに気を遣うのが面倒なので、基本的にこのブログでは画像は使用しない。

 

そんなわけで、アニメが好きだ。

三度の飯と睡眠の次くらいにはアニメ鑑賞が好きで、普段からいろいろなジャンルの作品を広く浅く見ている。もちろんアニメに限らず漫画や小説、ドラマや映画など面白ければなんでも好きだが、特に昔から慣れ親しんだアニメに関しては人一倍思い入れがある。今は少し子供向けのタイトルから深夜アニメ、劇場作品まで興味があればなんでも手を出しているといった具合だ。

 

そんな中で今回紹介したい作品は、眉月じゅんによる同名の漫画を原作としたテレビアニメ『恋は雨上がりのように』である。

すでに実写映画など各方面にてメディアミックスされている作品なので内容についての深い言及はしないが、アニメについてはAmazonプライムビデオにて現在見ることが出来るので、時間のある人は是非見てもらいたい。

あらすじとしては、陸上部のエースだったが怪我で走ることをやめてしまった高校生のあきらと、夢を諦めた過去を持つファミレス「ガーデン」の店長・近藤が、互いの存在を通じてもう一度己と向き合うというテーマの物語である。あきらはバイト先の店長である近藤に恋をしているのだが、当の近藤はすでに45歳のバツイチ。この異色の恋路を描く今作は、しかし決して恋愛作品と一言で言い表せるものではない。各々が各々の夢と、現実に立ち返るための、雨宿りのような作品なのだ。

なお、私は原作漫画や実写版を見ていないので、この記事ではアニメに関してのみの言及となることをご容赦願いたい。

特に今回語りたいのはシリーズ12話あるうちの、エピソード7「迅雨」。

この回ではあきらと近藤のすれ違いから、互いの気持ちを打ち明け関係が修復されるまでの一連の流れが描かれているのだが、私が特に注目したのはこの回における雨の描かれ方だ。この作品において”雨”は非常に強いメッセージを込めた舞台装置、モチーフとしてたびたび登場する。この空模様を描いた背景美術がまた大変美麗で素晴らしいのだが、それは一旦置いておいて。

この回の後半、台風接近の影響で外では歩くこともままならないような大雨暴風が吹き荒れている様子が描かれている。そんななか、あきらと近藤は二人、近藤のアパートの一室にて、停電して電気もつかない暗い環境の中で互いの気持ちを確かめ合う。そのときの様子が、あまりに優しく、そして美しい表現によって描き出されていて、私は度肝を抜かれた。

通常、嵐の夜というシチュエーションを場面の舞台として設定するとき、表現され得る感情は"不安"であったり"悲しみ"であったり、マイナス寄りな感情である場合が多い。プラスな感情を描く場合においても、それは”嵐の夜”という心細い環境を登場人物たちが乗り越える中で友情をはぐくむように、嵐の荒々しさを共通の敵として描くことで初めて成立するものだ。

ところがこの場面では、嵐は絵でこそ荒々しく表現されてはいるが、その雨音や雷鳴は優しげな劇伴に遮られ視聴者の元へは届かない。停電して暗いはずの室内は、稲光の柔らかな明るさによって彩られている。そのどれだけ幻想的で、美しいことか。この場面においては、嵐の荒々しさが登場人物たちの心情に影響を与えておらず、しかしそれがむしろ登場人物たちの関係性の強さや心の通い合いを強調する効果をもたらしている。この嵐の表現はステレオタイプ的な従来の表現を越えた、画期的な表現技法であったように私には感じられた。

 詳しくはやはり実際に作品を見てもらうしかない。そうでなくては伝わらない感情と温かさが、このシーンには溢れている。

嵐の夜、停電した一人暮らしの男の寝室。そんな華々しさのかけらもないシチュエーションをこれだけ美しく描いている作品を、私は他に知らない。誰かの視点というフィルターを通して見た世界は、きっとこれだけ美しく綺麗ではかないのだ。それをこれだけ瑞々しく描き上げることの出来るアニメというメディアは、やはりすごいものだと、そう素直に感じる回であったように思う。

こういう回があるから、やっぱり私はアニメが好きなのだ。そう思わせてくれる作品と出会えることの、なんと幸運なことだろう。

 

さあ、雨の上がった残りのゴールデンウィーク。一体何をして過ごそうか。

 

2019.05.03 都内某所にて